天使の階段
日が明けて、私はまた産婦人科に来ていた。

私服から手術用の服に着替え、分娩台とは別な場所に通された。

横になった私に、看護師さんが点滴を用意する。

「少しチクっとしますよ。」

その言葉の後に、私の腕に針が刺さり、続いて液体が体の中に流し込まれた。

どのくらい経っただろうか。

私の体は生理痛よりも酷い痛みに、耐えかねていた。

陣痛促進剤と言うモノを、点滴で流され、まだ開かれていない子宮口を、風船のようなもので、徐々に徐々に開いて行った。

最初は違和感だけで、全く痛みなどなかったのに。

時間が経つにつれて、まだ幼い赤ちゃんが、体の中から押し出される痛みを感じる。


産む苦しみ。

それともまた違う。

前の体に戻る為の処置。

そこに新しい生命が誕生する感動は、微塵もない。

「ううっ……」

苦しい。

痛くて痛くてたまらない。


「もう少しよ、紗香ちゃん。」

先生のそんな言葉が聞こえてくる。
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