天使の階段
1時間程してだろうか。

ガラガラと音を立てて、ストレッチャーは、私をある病室へと運んで行く。

子供が産まれた新米のお母さんとは、一番遠い部屋。

でも返ってその方がいい。

今は、ひたすら一人でいたかった。

誰にも会わずに。


新しい命を堕ろすことを、”処理”と言ったお母さん。

現実を受け止められないところは、しっかり私に受け継がれている。





殺したんだ。

誰でもない、自分の子供を……




産んであげることができなかった。

私がこんなに弱いばっかりに。

自分がとてつもなく、汚いモノに見えて。

とてつもなく、ダメな人間に思えた。



このまま消えてしまいたい。

そう思った。
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