天使の階段
夜になり、ナースステーションが賑いを見せた。

「あら、統吾君。今日もお母さんのおつかい?」

「はい。」

統吾君?

あの統吾君が、近くにいる。

私は、私の存在を知られたくなくて、無意味に寝返りをうった。

「気を付けて帰るのよ、統吾。」

「は~い。」

統吾君の声がやけに、大きくなる。


早く行って。

ドキドキしながら、統吾君が去るのを待った。

けれど、願いは虚しく、統吾君の足音は、私の病室で止まる。

「誰かいる?」

統吾君は、病室の中に向かって、そう言った。

黙っていると、統吾君は病室へと入ってきた。


えっ?どうして……


息を潜めて見ていると、開いていた窓を閉めている。

普段使われていない、この部屋の窓が開いていたから、わざわざ足を止めたんだ。

くるっと振り返った統吾君と、運悪く目が合う。

「えっ?岩崎?」
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