天使の階段
そして一週間後、柊子からバイトを紹介された私は、知らない人と、知らない場所で待ち合わせをした。

しばらく立っていると、一台の車が私に近づいてきた。

私の前に止まった車の窓が、スーっと開いて、中から優しそうな男の人が、顔を覗かせた。

「紗香ちゃんですか?」

「はい。」

「俺、柊子ちゃんの知り合い。よろしく。」

「宜しくお願いします。」

私は車の外から、頭を下げた。

「早速だけど、車に乗って。」

「はい。」

初対面の人の車だけど、私は“これがアルバイト”だと言い聞かせて、その車に乗った。


「俺の事はタカって呼んで。」

「はい。」

「ところで紗香ちゃんはいくつ?」

「16です。」

「ってことは、高校1年生?」

私は小さく頷いた。

「うわ~いいのかな。俺、32だから一回り以上歳離れてんのか。」

車を運転しながら、話を続けるタカさん。

お洒落なせいか、まだ20代に見える。
< 5 / 81 >

この作品をシェア

pagetop