天使の階段
いつの間にか車は、人影の少ない場所に来た。

タカさんは、サイドブレーキを引くと、上目使いで私を見る。

「紗香ちゃんは今日の事、柊子ちゃんから、なんて聞いてんの?」

「なんてって…」

私は柊子の言葉を思い出した。


ー男の人と1時間くらい、楽しくおしゃべりするの。ー

そして柊子は、可愛らしい顔で言った。

ーたまに体を触られるけど、騒いじゃダメだよ?それを我慢すれば、倍のお金が貰えるんだからー


私はゴクンと息を飲んだ。

「紗香ちゃん。」

ビクッと体が大きく震えた。

「最初からそんな事、無理だよな。いいよ、このまま帰って。紗香ちゃんとのドライブ楽しかったし。」

私は心のどこかで、ほっとした。

と、同時にこのバイトへの不安も当たった。

つまり、男の人に体を触らせるバイトだったって事。
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