ケモノ男子~ある日突然もふもふだった動物たちがイケメン男子になりました!?
1、私と本の世界
読んでいた本を閉じた私から、思わずほうっとため息にも似た息がもれた。
「すっごく!すっごくよかった!!」
手の中にある本の表紙をなでながら、私はたった今読みきったばかりの本の世界に浸る。
目をつむり、大きく息を吸い込む。
すると目の前には、広大な草原。
そしてそこに舞う桜吹雪。
その中で楽しそうに、けれど優雅につばさを広げる一匹のドラゴン。
ドラゴンの背中には冒険をともにし、想いを通わせた少女の姿が………。
ぱちっと目を開けると、そこは見慣れた私の部屋だった。
左手には窓があって、私はその窓にぴったりとくっつくように置かれたベッドの上にいる。
私は本を読むことが大好きで、寝る前の読書タイムが1日の中で一番好き!
布団を掛けて、さあ寝よう、と思っていたのだけれど、読みかけの本の続きが気になって、結局全部読んでしまったのだ。
「いいなぁ、いいなぁ、私もこんな風に冒険してみたい!」
本を胸に抱きかかえ、興奮冷めやらぬ私に、隣で丸くなって寄り添ってくれていた真っ白なねこのゆきが、「にゃあ」と小さく鳴いた。
「ね!ゆきもこの本おもしろかったでしょ?」
そう言いながらゆきをなでると、ゆきは気持ち良さそうにごろごろと鳴く。
真っ白な毛色に、抹茶色の瞳のゆき。
ゆきはいつも私にべったりで甘えん坊さんだ。
すると今度は足元から、真っ黒なねこのすみれが、私のほうへとやって来る。
真っ黒な毛色に、すみれの花のような紫色の瞳を持つ、もう一匹のねこ、すみれ。
すみれは少しつんつんとしていて、ゆきのようにはくっついてきてくれない。
けれどごくたまに、私の腕の中で眠ってくれるんだ。
お父さんにお母さん、そして私、月野 桃花に加えて、ねこのすみれとゆきが、うちの家族。
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