前世で魔王に殺された聖女ですが、ごく平凡な一般人に生まれ変わっても魔王に捕まりました。なんか用ですか?
会話終了。

(なんだ、この話術のスキルの無さは。というか話を続けようという努力が見えない、説教したい)

「教えないとキスするぞ」
「サラです!」

あまりにも脅し文句が恐ろしくて被せ気味に白状してしまった。
というか今のセクハラだよね。アウトなほうのやつだ。監禁する時点で倫理的にはもうダメだろうけど。

「……サラ」

確認するように、噛み締めるように言う魔王。少し嬉しそうなのはなぜだろう。

「なんですか?」

サラの手をとる。手の甲に口づけを落とす。

「サラ」

すっと左手の薬指を撫でられる。

「ちょっと! これは何!」

気がつけば指輪が嵌められている。

「逃げてもわかるようにしただけだ」
「やだ、なんてことしてくれたの!」

必死に指輪を外そうとしたが外れない。呪われているのか。

「サラ」

また見つめてくる。油断すると心を持っていかれそうになる。それくらい魅力的な相手だ。

「いつ許してくれる?」

殺したことを許せと言うのか。

「難しいですね」
「では、半年間待つ。半年経ったら問答無用で襲うからな」
「ええっ? なにその期限?」
「心の準備期間だ。覚悟しろ。もしくは、好きになれ」

「好きになればどうするの?」
「抱く」
「好きにならなかったら?」
「襲う」

なんだろうその選択肢、表現が変わるだけで結果は一緒だろう。理不尽にも程がある。おそろしい。

「ドン引きだわ」

魔王ははじめて微笑んだ。
今笑うところだっただろうか、こわい。

「発情スケベ野郎」
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