前世で魔王に殺された聖女ですが、ごく平凡な一般人に生まれ変わっても魔王に捕まりました。なんか用ですか?
夜は襲われるのではないかと怯えながら過ごし、昼は魔王がいないのでリラックスしていた。

いつものお姉さんが大量の本を持ってきた。

「一日、早くなりましたが本が届きました」
「すごい。こんなにいいの? ありがとう」

お姉さんは微笑んで一礼するとまた戻っていく。

できれば監獄から脱出する関連の本がほしいのだが。

「そんなに都合よくないわよね」

小説、ちらほら大人向けもある。

「発情スケベ野郎を思い出すわ」

サラは苦々しい表情になる。
手の甲を見つめる。

「神聖力があればもっと対等に交渉できるのに……」

昔の記憶を頼りに手に力をこめる。

「ダメだわー、神聖力ゼロだわ」

サラはベッドに飛び込んでゴロゴロする。

「あとは脱出するか、もうひとつはムリでしょ。好きになるなんてあり得ない」

仮病でも使って出してもらうか、相当な演技力がいるなぁとぼんやり考える。

「なんか変な食べ物落ちてないかな~」

起き上がり、何かないか棚を開ける。保存食しかない。
お腹を壊すくらいでは出してもらえないだろう、するだけ損だ。

絵の具で血のりを作って重症のふりをするとかも考えてみるが。

「絵の具を調達してもらわないと……」

お姉さんが調達したものは魔王に伝わっているかもしれない。バレたらえらいことになる。

「うーん」

サラなりに一生懸命考えているが良いプランが思いつかない。
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