『人妻の過去』
もっと…
もっと…


仁という人間を知っていたら…


アタシは仁を好きにならなかったのかな。


もっと…


アタシが大人で、色んな判断をきちんと出来ていたら…


もっと…


仁がアタシを愛してくれていたら…


もっと…


アタシが仁を愛していたら…


それは違う…。アタシは…これ以上がないくらい…


『仁を愛してた』


愛し過ぎて


おかしくなりそうだったよ。


他から見たら…おかしくなってたと思う。


もっと…もっと…


馬鹿になるくらい…


仁に溺れて


仁という海で


溺れて


死にたかった…。


でもアタシは、


溺れていても…


本当は、足を伸ばせば


地面に足が着くって事に気付いていた。


だけど、


そんな事に気付きたくなくて…


もっと…


溺れてしまいたくて


自ら


沖に向かって行った。


もっと…もっと…



だってそうしなきゃ…
仁とは居られないもの。






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