超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する

一方、アンセムは今日も図書館の手伝いをしていた。
最近のカイは、すっかりアンセム頼みである。
午前中カイが会議で席を外すため、アンセムにカウンターを頼んだのだ。
図書館の仕事にも慣れたアンセムは、同時に簡単な貸し出しデータの集計もしていた。

「おはようございます」

挨拶の声に顔を上げると、ナミルが歩きながら自分に会釈をして横切るところだった。

「おはよう」

挨拶を返したが、ナミルはそのまま歩いていってしまう。
ナミルは今年の入寮生で１８歳。
大きな茶色の瞳、艶やかな長い黒髪の持ち主で、小柄で華奢だが、いかにも抱き心地の良さそうな大きな胸をしている。
アンセムが初めての相手であり、片思いをしてアプローチを続けていたの。
勉強が苦手なのに共通の話題がほしくて生物学を途中から先行するほど本気だった。しかし、アンセムはテラスと付き合い始めてしまった。
ナミルは今、心の整理を必死につけようとしているところである。
少し前なら明るくアンセムに話しかけるシーンであるが、今は顔を見るのも辛かった。

普段はブリッコのナミルだが、本当はさばさばとした性格で感情をストレートに伝える清々しさがある。
アンセムはそこが好ましく妹のように思っていたので、ナミルのよそよそしい態度は正直寂しかったが仕方のない。