超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する
「カイさんの仕事全てを教えてください」

「全て?」

「はい。司書の仕事以外のことも。それを聞かなければ決断できません」

「なるほど」

カイはコーヒーを一口飲んだ。

「口外無用だぞ」

「もちろんです」

「この第三寮は何をするところだ?」

いきなり質問をされてアンセムは面食らった。

「生涯のパートナーを探す場所です」

「その通り。では、ここで働く大人はどれくらいいるか、職業は何種類あるか知っているか?」

アンセムは首を捻った。

「わかりません」

「1つの寮に職員は100人程度いる。
寮長を筆頭とし、医療チーム、事務処理チーム、生活チーム、フォローチームと細かく分かれているんだ。実際に寮生と接する職員は限られているがな」

「そんなにいるんですか」

「中央施設はまた別になる。司書は基本僕ひとりだが、他にもスタッフは数名いる。
ここ以外にも、教育施設、娯楽施設、飲食関係など、約300人程度が働いている」

そんなにもたくさんの大人たちがここで働いていることを、アンセムは知らなかった。

「表向きの仕事はご覧の通りだ。
だが、ここに勤める者は全員もう1つの仕事を持っている。薄々感づいてるんじゃないか」

「さあ…どうなんでしょうか」

「もったいつけても仕方ないか」

ふっとカイは笑った。

「中央施設も含め、第三寮内で働く者は、全員が寮生たちのカップリングに関わっている」

「どういうことでしょうか?」

「ピンとこないか。
例えば僕はこの図書館や、休憩中に立ち寄る食堂で、寮生たちがどのように行動し、どういった人間関係を築いているのか常に観察している。
僕だけじゃない。寮で努める職員は、調理師も、血液採取する医師も、共有施設を掃除する者も、物資を調達するものも、とにかく全員が表向きの仕事をこなしながら、寮生を観察し、気付かれないようにバックアップしているんだ」

「そう…なんですか…」

大人たち全員という事実を知り、アンセムは少し気味悪く感じた。
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