超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する

「別に監視カメラや盗聴器は使っていない。そう警戒するな」

アンセムの表情から気持ちを読み取り、カイはフォローを入れる。

「基本は寮生に任せている。
しかし、間が悪いこともあれば、お互いの気持ちに気付かずうまくいかない場合もあるだろう。それをうまくまとめるために、大人たちが偶然を演出したり、きっかけを作ってやることもある。その程度だ」

「はぁ…」

どうにもスッキリしないアンセムだった。
まるで自分たちが大人たちに操作されているようで、気分が悪い。

「僕はアンセムとテラスに関して、少しばかりのきっかけ作りを演出してやった。
おまえらの場合は露骨にやったから、アンセムにも身に覚えがあるだろう」

アンセムとテラス２人に仕事を任せたり、時には助言や叱咤をしたり。
どちらかがいないときに、相手への気持ちを聞いたり。
確かにそうだとアンセムは思った。

「だからと言って、気持ちを操ったわけじゃない。あくまでも誰に好意を寄せるかは寮生たちの自由な意思だ。
僕たちは、その願いが通じ合えるように、ほんの少し動くだけだ」

カイはアンセムを見た。
動揺を隠せないようだ。
目には迷いがあった。

「もしアンセムが僕の後任となれば、来年度は引継ぎの１年になるだろう。
司書としての仕事の他に、ここで働く者がどのようなネットワークで寮生を支援しているかの説明もしなければならないな」

「なぜ僕を後任にと考えたんですか？」

司書の仕事だけなら、カイが自分を後任に選ぶことに疑問はない。
しかし、裏の仕事に関して、アンセムは自分に適性があるとは思えなかった。