【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「あのね、シェリル、聞きなさい」

 ふいに真剣な表情になったメラニーさんが、私の肩をつかむ。

 じっと見つめてくる目が、今まで以上に複雑な感情を宿しているかのようだった。

「――私は『豊穣の巫女』だったのよ」
「……え」

 でも、そんな考え一瞬で吹き飛んだ。

 だって、いきなりのカミングアウトがあまりにも驚きの内容だったから。

「あなたが魔力を注いだ水晶には、歴代の『豊穣の巫女』の魔力がこもっているの。……だから、私はあなたに夢を見せることができている」

 じっと見つめてくるメラニーさん。どこか、苦しそうに見えるのは気のせいじゃない……と思う。

「……私は、あなたの重荷を取り除きたいの」
「重荷、ですか?」
「えぇ、あなたがもう『豊穣の巫女』として苦しまなくてもいいように。そう、してあげたい」

 メラニーさんが私の身体を抱きしめてくる。彼女は一体、なんなのだろうか。まるで実態があるみたいに、彼女の身体は温かい。血が通っているみたいだ。

「『豊穣の巫女』は苦しみばっかりよ。……私は、孫にまでこの重荷を背負わせたくないの」
「……メラニー、さん」
「あなたが望めば、力は全部消えるわ。……あなたは普通の女の子になれる」

 ……普通の女の子。

 その単語に、心が揺れる。

(私はこの力で、周りに迷惑ばっかりかけてきたわ……)

 すぐに暴走する魔力。最近では倒れてばかり。

 もしも、健康体になれるのならば……それは、きっと嬉しいことなんだ。

 わかる。それくらいはわかる。ただ、望んでいるかどうかは、わからない。

「……私、このままでいい、です」

 自分の気持ちはわからないままなのに。口から出たのは、メラニーさんの提案を否定する言葉だった。

 彼女の目を見る。その目が、私を射抜く。……まるで驚きみたいな。そんな色を宿している。

「私は、確かにこの力を疎ましく思っていました」

 過去は消えない。そう思い続けた日々も――消えない。それは、間違いない。
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