【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「私はメラニーというの」
「……メラニー、さん」
「お祖母さまって呼んでもいいのよ?」

 冗談なのか、本気なのか。あいにく私にはそれがわからない。ぽかんとする私に、メラニーさんが肩をすくめて見せた。

「私の娘は、あなたの母。……意味、わかるかしら?」
「……は、ぃ」

 それは、わかる。かといって、私は幼い頃に実母を亡くしている。そのせいで、母の親族のことはほとんど知らなかった。

 父曰く、母も早くに母親を亡くしていて、嫁ぐ少し前に父も亡くしたと。……それくらいしか、知らない。

「私もあの子も、どうしてこういう運命なのかしらね。……自分の娘を置いて、早くに死ぬなんて」
「……あの」
「私ね、三十歳で死んだのよ」

 ……ということならば。彼女が私の祖母というのはあながち嘘ではないということなのかもしれない。

 だって、見方によっては三十歳くらいに見えるんだもの。

「ねぇ、あなた、お名前は?」
「……シェリル・リスター、です」

 自然と口が自分の名前を紡ぐ。メラニーさんは「シェリル、か」と小さくつぶやいていた。

「あの子も、私と一緒だったのよね。娘の成長が見たかったのに、見ることができなかった。後悔ばっかりの人生だったでしょうね」

 メラニーさんのその言葉に、どうしてか心臓がチクチクと痛む。

 ……お母さまのこと、考えることはどんどん少なくなっていた。本当は、私が覚えていなくちゃダメだったのに。

 おぼろげにも覚えていなくても、私のお母さまはたった一人だったのに。

 私のそんな気持ちを見透かしたように、メラニーさんは「いいのよ」と言ってくれた。

「過去にとらわれるよりも、前を向いたほうがいいわ。あなたにはあなたを大切にしてくれる人が、いるのでしょう?」
「……はい」

 旦那さまだけじゃない。クレアもマリンも。サイラスをはじめとした使用人たち。ロザリアさんや、それからエリカ。

 私には大切な人がいっぱいいて、もう一人じゃないんだって思っている。
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