【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「抱っこ、してください」

 まるで子供のようなおねだりだろう。けど、私に出来るわがままなんて、これくらいなのだ。

 あと出来ることと言えば。キスを強請ったり、くっついていたいと強請ったり。それくらい。

「……今日は、無理だ」

 いつもならば渋々にでも、旦那様は了承してくださるのに。今日に限って、どうしてか断ってこられる。

 一気に不安な気持ちがこみあげてくる。……元々、今の私は情緒不安定なのだ。

「言っておくが、シェリルが想像しているようなことでは、断じてない」

 旦那様は私の不安を読み取ってか、小さくそう零された。……私がなにを心配しているのか。旦那様にはお見通しらしい。

「ただ、そうだな。あえて言うのならば……ほら、くっつくといろいろと、問題、だろう」

 彼がお顔を背けてそう呟かれる。

 そういえば、新婚の状態だけれど、『そういうこと』はあまりしていない。理由は簡単。私の体調が優れないから。

 旦那様は、第一に私の身体を労わってくださる。だから、手を出してくださらない。

「私は、別に……」
「俺が嫌なんだ。シェリルの負担には、なりたくない」

 はっきりと断る意思を告げてこられる旦那様。

 ……正直、そのこと自体はありがたいのだと思う。……これは、私の問題だ。

「……ただ、儀式が終わったら。存分に一緒にいよう」

 なのに、乙女心とは単純なものだ。そんなお言葉一つで、気持ちが浮上するのだから。
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