【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
(申し訳ないと思ってはダメ。……その恩に報いようと思わなければ)

 あれだけ馬車の中で泣いたのに、どうしても怖くなってしまう。

 その所為で夕食もあまり喉を通らなかった。せっかく美味しそうだったのに。

「さようでございますか。……私には、儀式のことがよくわかりません」

 ゆるゆるとサイラスが首を横に振ってそう言う。……サイラスは、なんでも知っていると思っていたのに。

 知らないことがあるなんて、本当に意外。そういう意味を込めて目を瞬かせれば、サイラスがふっと口元を緩める。

「私にも知らないことくらいありますよ。そして、私がいくら予想しても、そのレベルを超えるものだってあります」

 サイラスが穏やかな声でそう言う。私はぽかんとする。

「例えば……そうですね。予想以上に旦那様がヘタレだったとか。そういうことでしょうか」
「……そう、なのね」
「えぇ、もう少し男らしいところを見せるかと思ったのですが。本当に、あの頃はやきもきしていましたね」

 それはきっと、私がリスター家に馴染み始めた頃のことだと思う。

 使用人たちが私のことを受け入れてくれて、旦那様とくっつけようとしていたとき。今思えば、本当に懐かしい。

 ……まだ、一年と少ししか経っていないはずなのに。

「私は、本当に奥様に感謝しております」

 不意に真剣な声音で、サイラスがそう伝えてくる。私は彼の目を見た。真剣な色をした目だった。
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