【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「あのままでは、旦那様は過去のトラウマを乗り越えられず、ご両親との仲もこじれたままだったと思います。それに……その。クレアやマリンも、ここまで楽しく働けていないと思うのです」
「……サイラスは、二人の養父だものね」
「えぇ、僭越ながら。……可愛い娘たちですよ」

 サイラスは若い頃に捨て子だった二人を拾って、自身の娘として育て始めたらしい。

 彼はリスター家の使用人の助けがあったからこそできたことだと言っていた。……でも、クレアとマリンを見ているとわかるのだ。

 彼女たちはサイラスを本当に慕っているのだと。

「目に入れても痛くないとは、このことなのでしょうね」
「……そうなんだ」
「はい。きっと奥様もお子が出来ればわかりますよ」

 ……その言葉が、嬉しかった。だって、彼はさも当然のように私が戻ってくると言ってくれている。

 私がリスター家に戻ってきて、一緒に暮らしている未来を口にしてくれている。

「……旦那様は、きっと子供には甘いわ」
「さようでございましょうね。特に娘なんて生まれれば、デレデレになる気がします」
「ふふっ、目に見えるようにわかるわ」

 もちろん、貴族に生まれた以上、一番に望まれるのは跡継ぎの誕生。つまり、男の子が生まれることだと思う。

 けど、どっちが生まれても可愛いだろう。元気に育ってくれれば、私はそれ以上望まない。

「常々クレアやマリンと言っているのですが、娘の場合旦那様要素は必要ありませんね。奥様にそっくりなのが、望まれます」
「……私は、そうは思わないけれど」
「いえいえ! 旦那様の要素なんてもうこれっぽっちもいりませんからね」

 そんな風に話していると、少しずつだけれど心が軽くなる。

 サイラスはそれがわかっているんだと思う。わざとこんなお話をして、私の気を逸らしてくれている。

「……ありがとう」

 ぽつりと口から零れたお礼に、サイラスが目を細めてくれた。

「私のことを、受け入れてくれて」

 初めはどうなるかと思ったけれど、私はここに来れて間違いなく幸せだ。

 それだけは、断言できる。
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