【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
 領主とは家族になにがあったとしても、領民のほうを優先せねばならない。ひと昔前までは、そう言われていたそうだ。

 今でこそその慣習みたいなものは廃れつつあるけれど、やっぱりそう簡単に変わるようなものではない。

「シェリル」
「領民たちは、旦那様を頼りにしておりますから」

 そうじゃないと、要望書なんて送ってこないし、相談だってしてくれないだろう。

 だから、旦那様は領民にとってとても頼りになるお人なの。

「そうか。けど、領地を回るとな。いつも問いかけられたんだ。――奥様は大丈夫かって」
「……そ、の」
「領民にとって、シェリルはもうかけがえのない存在だ」

 なんだかそう言われると、涙が込み上げてきた。悲しいとか、不安とか。そういうことからじゃない。

 ……嬉しい涙だった。あぁ、私は今日、一体どれだけ泣いてしまうのだろうか。

「領民の中には、俺がシェリルを泣かしていないかとか、聞いてくる奴もいるほどだ」
「……そ、うなのですか」
「あぁ。もしかしたら、俺よりも頼りにされているのかもな」

 絶対に買いかぶりすぎだって思う。けど、それを言うのはちょっと違うような気がして。私は黙って言葉を聞く。

「若いのにしっかりとしているとか、よく考えている人だとか。あとは、俺のストッパーだとか、称されているな」
「……ストッパーだなんて」
「実際、そうだろう。俺はシェリルがいないと暴走する」

 至極真面目な表情でそう言われて、私は……おかしくなってしまった。

 泣きながら笑うなんて、ちょっと変なのに。今は、どうしてかそれがしっくりと来てしまう。

「だから、戻って来い。……戻ってきたら、旅行に行くんだろ」
「……はい」
「それから、シェリルの願いを何でも聞く。……もちろん、聞ける範囲はあるが……」

 付け足した言葉に、私はくすっと声を上げて、また笑って。旦那様の頬に手を押し当てた。

「私のお願いは、私とずっと一緒にいてほしいということが一番ですよ」
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