【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「……どうぞ、奥へとお進みくださいませ」

 ロザリアさんが一緒に来れるのはここまで。ここから先は、私が一人で入り、儀式を行う。

 そっと儀式の間に足を踏み入れると、中からむわっと淀んだような重い魔力を感じた。

(……入るのを、ためらってしまう)

 一瞬だけ頭の中に浮かんだことを振り払って、私は足を前へ、前へと進めていく。

 奥へと進むたびに、その魔力の淀みが強くなる。なのに、足を止めることはない。

 違う。足を止めることは許されないという強迫観念。それから、まるでそちらに引き寄せられるかのように足が進むのだ。

 ようやく足が止まったのは、祭壇のすぐ前。そっと目を伏せていれば、目の前に誰かが立ったのがわかった。

「……おぬしが、今回の巫女かえ?」

 顔を上げる。そこにいたのは、恐ろしいほどに美しい一人の女性。

 鋭い目を私に向けて、そのきれいな唇から言葉が紡ぎ出される。

「……はい」
「そうか」

 女性は祭壇を挟んで私に向き合う。何処か艶めかしくて、愁いに満ちたような目をしていた。

「……さて、おぬしの願いを聞こう」

 高慢な口調でそう問いかけられて、私の背筋に冷たいものが走った。

 ……なんだろうか。もしかして、彼女は怒っているのではないだろうか?

 一抹の不安。微かに震える唇。私は震えを抑え込んで、言葉を口にする。

「土の魔力を、元に戻していただきたく。女神さまへの貢物として、私の魔力を……」
「――いらん、そんなもの」

 冷たく吐き捨てられた言葉。

「そんなものいらんわ。……大体、今回の魔力不足はわしが意図的に起こしたものじゃ」
「……え」

 自然と言葉が零れた。

 だって、自然の魔力が枯渇するのは、『女神さまの魔力が尽きかけている』からというのが定型で……。

「おぬしは知っておるだろう? 今回の魔力の枯渇は、歴史上類を見ないほどに早かったと」
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