【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
 ……彼女は、どうしてこんなにも人間を嫌うのか。それは私には想像もできない。理解も出来ない。

 ただ、どうしてなのだろうか。私は彼女の気持ちを理解したいと思ってしまう。

(救いたい、助けたい。そんなおこがましいことは思わない。ただ、理解して寄り添いたい)

 それが出来るのは、現状『豊穣の巫女』である私だけ。

 私が彼女を突き放すということは、全てをあきらめるということは。

 彼女を孤独にしてしまうということだ。

「……一つ、申し上げてもよろしいでしょうか?」
「ほう」

 私の言葉に、女神さまがきょとんとされた。小首をかしげて、私を見つめる。

「人間は、愚かです。私にその気持ちは、わかります」

 自分の欲望ばかりを優先する。他人を蹴落として生きていく。

 そんな存在、この世にいてもいなくてもどっちでも一緒だ。むしろ、いないほうがいいとも言える。

「私だって、人を憎んだことはあります。誰彼構わず愛せる博愛主義者でもない」

 嫌いな人は嫌いだし、人を憎むことだって何度も何度もあった。

 どうして私ばっかり……って思って、苦しんだ。

「憎い人間にはそれ相応に天罰が下ってほしいし、嫌いな人間とは距離を取りたい」

 許すことが正義だったとしても。私は自分の心に嘘をついてまで、他人を許す必要なんてないと思う。

 それが悪だと言うのならば。私は自分を悪だと認めてしまいたい。

「――許す必要なんて、ないんです」

 許す必要はない。だけど、それに囚われて自分の時間を消費するのは――これ以上ない、愚かなことだ。
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