【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「私は、女神さまじゃない。だから、あなたさまの葛藤は、苦しみは、わからない」
「……それは」
「けど、あなたさまが今まで見てくださったこの国は、そんな悪いことばかりじゃなかった……と、思います」

 そんな腐ったことばかりじゃない。

 いいことだってあっただろうし、嬉しいことだってあっただろう。

「……バカじゃな、おぬし」

 しばらくして、女神さまがそう言葉を発した。彼女の声は何処か震えている。

「メラニーそっくりだ。……あいつも、似たようなことを言いおった」
「……そりゃあ、血がつながっていますから」
「全部、もうどうでもよいわ」

 小さくそう吐き捨てられた言葉。驚く私の腕の中から、彼女が抜け出す。

「……間違えるよな、そりゃあ、誰もが」

 ぽつりと零された言葉は、私の耳にもしっかりと届いた。

「今回ばかりは、見逃してやる。……ただし、次はないからな」

 女神さまが私のほうを見つめて、そう告げられた。

 ……私は大きく頷く。

「はて、じゃあ、少し寝る」

 すたすたと祭壇のほうに歩くその姿は、凛々しい。

 私が彼女に見惚れていると、彼女は最後とばかりに振り返った。

「――シェリル、おぬしが好きだ」
「え……」
「案外芯の強いおぬしを、気に入ったわ。おぬしを、おぬしの子孫を。……見ていたい」

 それは、彼女の最後の言葉だった。

 ぶわっと大きく吹いた風。目を開ければ、もうそこに女神さまはいない。

 ……そして、私は……その場で、意識を失った。
< 141 / 156 >

この作品をシェア

pagetop