【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第40話 ただいま
 ゆっくりと瞼を開けた。

 視界に入ったのは見知らぬ天井。鼻に届くのはなんとも言えない微妙なにおい。

(……美味しくなさそう)

 どうしてかそう思って、私はそっと身体を起こした。

 閉じられたカーテンが、窓から入って来た風で揺れている。ちらりと見えた空は、真っ黒だった。

「今は……」

 何時くらいかと思って、私は横になっていた場所から下りようとした。

 どうやら私が横になっていたのは寝台らしい。肌触りのいい毛布。……ただ、寝心地はあまりよくなかったように思う。

(……土台が硬いのね)

 なんて思って、私が移動しようとすると。ふと、誰かが側にいることに気が付いた。

 その人は寝台に突っ伏して眠っているようで。私はそちらに視線を向ける。

「……旦那様?」

 そこには、すやすやと眠る旦那様がいらっしゃった。

 いつもよりも少し幼く見えるのは、前髪が下りているからなのか。

 そう思いつつ、私は彼の寝顔を観察する。……たまに見る寝顔とは、少し違う。なんだか、疲れているような雰囲気だった。

「……私、心配ばっかりかけてしまったものね」

 一体どれほど眠っていたのか。儀式にどれだけの時間がかかったのか。

 私には想像もつかないけれど、待っている人からすれば気が気じゃない時間だったのだろう。

 ゆっくりと手を伸ばして、彼の肩に触れた。……声が聞きたいと思った。でも、起こしてしまっていいのだろうか。

 葛藤して、手を引っ込めたり伸ばしたり。

「……シェリル?」

 そんなことをしていると、私の名前が呼ばれた。そして、手を掴まれる。

 まるで逃がさないとでも言いたげな強い力で掴まれて、私はびくんと身体を跳ねさせてしまった。
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