【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「……あの、起きていらっしゃいますか?」

 控えめにそう問いかけるけれど、返答はない。……寝ぼけていらっしゃったのだろうか。

(寝ぼけているのに私の名前を呼ぶの? それも、手も掴むなんて……)

 なんていうか、面白いお人だ。

 そう思ってくすくすと声を上げて笑っていると、もう一度「シェリル?」と名前を呼ばれた。

「……はい」

 返事をする。そうすれば、旦那様の瞼がゆっくりと開く。

 その目が私を見つめる。少しの間を置いて、彼がハッと身を起こした。

「シェリル!?」

 旦那様が、慌てたように立ち上がる。その際に腰掛けていたのであろう椅子ががたんと大きく音を鳴らして倒れた。

「……あ、あぁ、悪い」

 まるで情緒不安定だ。驚いたかと思ったら、しょぼくれて。

 見ている分には面白いかもだけれど、彼の気持ちを思うとこれ以上このままには出来なかった。

「はい、シェリルです」

 淡々と答えれば、彼が私の両頬を両手で挟み込んだ。ムニムニと頬を揉まれて、ちょっとだけ眉間にしわが寄る。

「……本物か?」

 そう問いかけられて、こくんと首を縦に振る。

「夢じゃないんだな?」

 もう一度首を縦に振る。

「……戻って来たんだな」

 一体どれだけ確認すれば気が済むのだろうか。

 心の奥底ではそう思うけれど、あまりにも震えた彼の声を聞いていると、なんだか突っぱねることが出来なかった。
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