【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「はい。……そう、ですね」
「……そうか」

 私の言葉に旦那様がほっと胸を撫でおろされたのがわかった。

「ほかの者たちにはそれぞれ交代で休んでもらっている」
「……そうですよね。夜中……ですものね」

 時計を見る。針は三時を示していて、真夜中だ。

「……ところで、旦那様は一体どうしてこちらに?」

 きょとんとしてそう問いかければ、彼は気まずそうに視線を逸らす。……聞かれたくなかったんだろう。

「いや、さすがに不安だったからな。……目覚めるまでついておこうと、思って」
「そうなのですね」

 冷静に返せたはずだ。……胸の奥底から湧き上がってくる歓喜の感情は、言葉にはこもっていないはず。

「ところで、私は何時間くらい眠っていました?」
「儀式にかかったのは十八時間ほど。シェリルが眠っていたのは……そうだな。四日……くらいだな」

 ……そんなに眠っていたんだ。そりゃあ、旦那様も心配になられるはずだ。

 それから、少しの沈黙。どちらもなにも言わなくて、なんだかちょっといたたまれない空間。

 私は旦那様をちらりと見つめて、口を開こうとして……やっぱり無理と思って、閉ざす。

(なにを、言えばいいんだろう……)

 散々心配をかけておいて、なにを言えばいいのか……。

 そう思う私の気持ちを汲み取ったかのように、旦那様が「シェリル」と改めて名前を呼んでくださった。

「……はい」

 返事をする。そうすれば、旦那様は「言いたいことが、あるんだが」とおっしゃった。

「言いたいこと、ですか?」
「……あぁ」

 神妙な面持ちで頷いた彼が、意を決したように口を開いた。

「――おかえり」

 その言葉は、シンプルなのに今の私に一番効果があったらしい。

 涙がぶわっとこみあげてきて、私は震える声で言葉を返す。

「――ただいま、です」
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