【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
 ◇

 それから、私とクレアは旦那様の執務室に向かうことにした。

 サイラスに訳を話せば、彼は快く旦那様が今執務室でお仕事をされていると教えてくれた。……ちなみに、浮気疑惑については言っていない。彼のことだもの。クレアと同じ反応をするのだもの。

(一応、ちょっとお話がしたいから……と言ったけれど、前触れもなく訪れたら、やっぱり怪しまれるかしら?)

 私の後ろではクレアが怒りの形相でついてきている。正直、私一人でも全然構わないのだけれど。

(……はぁ、最近横になってばっかりだったから、ちょっと歩くのも辛いかも……)

 ふらついてしまいそうになるたびに、クレアに支えてもらう。迷惑ばっかり、かけているのよね……。

「ごめんなさいね、クレア。……まっすぐ、歩けなくて」
「いえ、奥様は悪くありませんわ!」

 私の目をしっかりと見つめて、クレアはそう言ってくれる。……その言葉は、本当にうれしい。ちょっと思い込みが激しくて、暴走しちゃうところもあるけれど、クレアは本当にいい侍女なのよね……。

(ううん、違う。このリスター家のお屋敷の使用人は、皆さん本当にいい人ばかりなの)

 こんな私にも親切にしてくれるし、優しくしてくれる。その感情は同情からじゃない。……それが、本当にうれしかった。

 そんなことを思いつつ歩いていると、旦那様の執務室の前にたどり着く。……ノックしようと手を伸ばして、やっぱり旦那様の元を訪れるのは止めようと思った。

「……ねぇ、クレア」

 だから、クレアに視線を向けて「やっぱり、止めましょう」と声を出そうとしたときだった。
< 23 / 156 >

この作品をシェア

pagetop