【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
(あのときは、まさかこんなことになるなんて思いもしなかったけれど……)

 旦那様と結婚して、この家の夫人になるなんて。想像もしていなかったし、予想もつかなかった。

「……そうか」
「あのとき、こんなことになるなんて想像していませんでした」

 目を閉じて、静かに自分の考えを言葉にしてみる。

「……そうか。俺も、同じだ」

 旦那様が、私の頭を撫でてくださった。……子供扱いされているようで、あまりいい気分にはならない。けれど、心地いい。

「まさか、シェリルと結婚することになるなんて。想像もしていなかったし、予想もしていなかった」
「……はい」
「それに、まさか俺のことを好きになってくれるとも、思わなかったな」

 ほんの少しの自虐がこもった言葉。……それにムッとして、私は重たい瞼を開ける。

「旦那様は、とても魅力的です……」
「……そうか?」
「はい。私にとっては、王子様のような存在です」

 はっきりとそう告げた瞬間、旦那様が笑われた。……まぁ、旦那様って見た目だけだと王子様っていう風貌じゃないしね。

「俺は、どちらかといえば評判から言えば魔王だな」
「……そう、かもしれませんね」
「……まぁ、誰から魔王と思われても構わない。……シェリルの王子様になれていたら、いいな」

 とても優しい声音だった。心の底からそう思っているのが、ひしひしと伝わってくる。

「私も、柄じゃないけれど、旦那様の……お姫様に、なれていたらいいなぁって」

 頬を緩めて、そう言ってみる。すると、旦那様も頬を緩められた。

「シェリルは、俺にとってはいつだってお姫様だ」
「……ありがとう、ございます」

 お礼を言って、どちらともなく笑い合う。

 ……この日々を守るためにも、私は頑張らなくちゃならない。

「……シェリル、俺と一緒に、生きてくれ」

 そして、こんな風に縋ってくるこのお方を、おいていけないと思った。
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