【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「きちんと、きちんと……」

 ぎゅっと目を瞑って、言葉にする。……心臓が、なんだか嫌な音を立てているような気がした。

「奥様。クレアさんを――」

 しばらくして、ロザリアさんが戻ってきてくれた。が、すぐに「奥様!?」と声を上げて、私のほうに駆け寄ってくる。

「大丈夫……じゃ、ないですよね。とりあえず、部屋に戻りましょう」

 ロザリアさんが私の背中を撫でながら、そう言ってくれる。だから、かもしれない。私はロザリアさんの衣服を、ぎゅっとつかむ。

「……わ、たし」

 大丈夫だって、言おうとした。なのに、上手く言葉が出てこない。視界がぐるぐると回るみたいな感覚で、頭がふらふらとする。
 血の気が引くような感覚でもあった。

「奥様! 奥様!」

 耳元で聞こえていたはずのロザリアさんの声が、遠のいていく。

 視界が真っ暗になって、ふわふわとするような感覚。目を開けていることも辛くて、私はゆっくりと瞼を落とす。

「クレアさん! 至急、サイラスさんか旦那様を!」

 意識を失う前に聞こえたのは、ロザリアさんの焦ったような声だった。
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