【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「はい。私は、いつからでも人はやり直せると思っています」
「……そう」
「もちろん、私の実父のような、何処まで行ってもろくでなしはいますが……」

 お父さまやお義母さまは、何処まで行ってもろくでなしだった。

 侯爵家が没落してもなお、成り上がることを考えていた。そして、その手段としてエリカを使おうとしていた。

 ……本当に、ろくでなしの親だ。

「そう。けど、奥様。もしも、私があなたのお父さまのようなろくでなしだったら、どうする?」
「それは、ないですよ」

 アネット様の言葉を、蹴り飛ばす。彼女はまさかそんな言葉が返ってくるとは思わなかったのか、目をぱちぱちと瞬かせていた。
 私は、笑う。

「アネット様の本質は、とてもお優しい人で素敵なお人です。……私は、わかっているつもりです」

 彼女は私に実害は加えなかった。結局、それが全てなんじゃないだろうか。

「全く、あなたってお人好しねぇ」

 肩をすくめて、しみじみとそう呟くアネット様。

 ふと彼女が手を伸ばして、私の頬に指を押し当てた。……じんわりとした温かさがこみあげてくる。

「これが償いになるとは思わない。……だけど、私、ギルバートにそれ相応に償いたいの」
「……はい」
「だから、奥様。……私に出来ることがあったら、協力するわ。なんでも言って」

 覚悟がこもった言葉だった。……協力してくれる。なんでも言っていい。

 そうなれば、私がお願いすることは一つだ。

(正直、図々しいとも思うけれど……)

 これは人の厚意に付け込んでいるとも受け取られかねない。

 それでも、私はお願いしたい。アネット様のご厚意を、無駄にはしたくない。
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