セカンドマリッジ ~病室で目覚めたら、夫と名乗るイケメン社長との激甘夫婦生活が始まりました~
 ある日に、悟に大事な話があると伝え、リビングのテーブルで正面から向き合う。

「悟さん、ごめんなさい。私たち別れましょう」
「え……なぜ?」

 悟は信じられないという表情でこちらを見ている。今日まで恵美理のことは一切口にしなかったのだから、志歩がその提案をしたことに驚くのも無理はない。

 志歩はもう隠さなくていいのだと、すべて知っていることを伝える。

「……聞きました。聞いてしまったんです」
「聞いたって、何を?」
「恵美理さんとの会話を、聞いてしまいました」
「っ!」

 明らかな動揺が伝わってきた。悟のその様子が、あの日の会話が真実だと告げている。

「……ごめん。卑怯なことをしているとはわかっていた。でも、騙すつもりではなかったんだ。どうしても言えなかった」

 苦悩の表情を浮かべる悟に、いいのだと首を振る。今日まで恵美理のことを少しも匂わせなかったのは、志歩を思ってのことだともうわかっている。

 志歩が悩み続ける間も、悟はずっと志歩に寄り添っていてくれたのだから。

「大丈夫です。悟さんの優しさだとわかっています。でも、このままというわけにはいかないから……だから、別れましょう」
「そんなことを言わないでよ、志歩さん。ちゃんと話すから、別れるなんて言わないで」

 話すと言われても、志歩はそれを受け止められない。恵美理とのことを悟の口から聞けば、絶対に苦しくなる。今はまだ耐えられない。

「今は冷静に話せそうにないんです。話し合いが必要なことはわかっているんですけど、まだできそうにありません。ごめんなさい。心の整理がつくまで、しばらくここを出ます」
「出るって……」

 志歩は立ち上がり、事前にまとめておいた荷物を持ち、玄関へと向かう。

「志歩さん、待って」
「ごめんなさい」

 未練が残らないよう、振り返らずに速足でエレベーターへと向かった。
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