セカンドマリッジ ~病室で目覚めたら、夫と名乗るイケメン社長との激甘夫婦生活が始まりました~
「まーた難しい顔してる」

 加奈の指摘に慌てて表情を緩める。

「あー、はは、ごめん。だめだね。なかなか踏ん切りがつかなくて」
「あのさ、別に踏ん切りつけなくてもいいんじゃない? そんなに好きなら、別れなくていいと思うんだけど」

 志歩の今の状況と気持ちを知っているからこその言葉だろう。

 悟自身のことは詳しく話していないが、彼に想い人がいることや、その気持ちを隠して志歩と一緒にいること、さらには志歩が彼らのために別れようとしていることもすべて加奈には話している。心配をかけないように。

 なにしろ一度目のときに、加奈には随分と心配をかけているのだ。

 あのときは志歩が突然ウィークリーマンションを探し始めたものだから、悟に何かひどいことをされているのではないかとあらぬ誤解を与えてしまったらしい。それならば自分のところで匿おうと、ここでの滞在を提案してきたわけだ。

 もちろんその誤解はすぐに解き、悟を思っての行動だということは話しておいたが、それ以上の事情は伝えていなかった。

 そんな状態で志歩が記憶を失くしたから、加奈は志歩の状況をつかめず困っていたようだ。志歩が悟を想っていることだけは加奈もわかっていたから、あえて事故前のことは話さず、ずっと様子を見守ってくれていたらしい。

 そういうわけで、心配をかけてしまった加奈には、言える範囲のことすべてを伝えている。もちろん志歩がまだ悟を心から愛していることも、加奈は知っているのだ。

 だから、今の言葉は志歩を思ってのものだとわかってはいるが、その提案に乗ることはできない。
< 136 / 173 >

この作品をシェア

pagetop