セカンドマリッジ ~病室で目覚めたら、夫と名乗るイケメン社長との激甘夫婦生活が始まりました~
「それはだめ。彼の気持ちを犠牲にはしたくないから」

 加奈はなぜか訝し気な目でこちらを見てくる。

「ねえ、志歩が言ってることは本当なわけ? どうにも信じられないんだけど。だって、毎日のように連絡きてるんでしょ? 志歩に気持ちがあるとしか思えない」

 確かに悟からは毎日会いたいという内容の連絡がきている。だが、だからといってあの日のことがなくなるわけではない。加奈に話したことは紛れもない真実だ。

「本当なの。ちゃんとこの耳で聞いたから。やり直したいって話してるのを。私のことも大切に思ってくれてるのは確かだと思うけど、彼が本当に一緒にいたい人は私じゃない」
「じゃあ、この半年のことはどうなるの? 記憶を失くした志歩に寄り添い続けるのって、簡単なことじゃないと思う。しかも、別れを切り出した直後だったんならなおさら。もう一度志歩に好きになってもらうようなこと、わざわざしないでしょ」
「それは……優しい人だから。本当に誠実で優しい人なの。きっと記憶を失くしたことに責任を感じて、そばにいてくれたんだと思う。今思えば、尋常じゃないくらい甘やかしてくれたのも、罪悪感があったからじゃないかな」

 わざわざ護衛をつけてくれたり、たくさんの贈り物をくれたのは、彼なりの贖罪だったのではないかと思う。記憶を失っている以上言葉での謝罪ができないから、行動で償おうとしていたのだろう。

 それを純粋な善意として受け取っていたことがとても悔やまれる。
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