セカンドマリッジ ~病室で目覚めたら、夫と名乗るイケメン社長との激甘夫婦生活が始まりました~
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 自宅に帰り着き、自室の椅子に腰かけた悟は熱くなった目頭を指で押さえる。

「志歩さんっ」

 複雑な思いが胸中を渦巻き、悟の瞳を濡らしていく。

 三日ぶりに開かれた彼女の瞼。視線が合ったあの瞬間が忘れられない。何度も脳内で再生される。

 志歩の意識がなくなってから今日までずっと気が気でなかった。

 仕事の合間を縫っては様子を見に行っていた。

 このまま目覚めなかったらどうしようと強い不安を抱いていたのだ。

 だから、今の悟の心の中を圧倒的に占めている感情は安堵。志歩の意識が戻ったことが嬉しくてならない。

 しかしながら、志歩に忘れ去られたという事実が悟に重くのしかかる。

「愚かな僕への罰なのか……」

 志歩が記憶を失うことになった原因であるあの日の事故。その事故が起こるまでの経緯。

 それを思い返せば、強烈な痛みに襲われる。

 あのときにああしていれば、こうしていれば――そんな数多の後悔が悟の中に浮かぶが、すでに起こってしまったことに対して後悔しても遅い。

 取り返しのつかない出来事に対して、悟ができることはただの懺悔にほかならなかった。

「志歩さんっ、ごめん。ごめん……」

 一人きりの空間で、ここにいはいない彼女を思いながら何度も繰り返す。

 意味のない行為だとわかっていてもやめられなかった。

 そうして涙が枯れるまでそれを繰り返した先に出てきた言葉は、ひどく自分勝手なものだった。

「それでも、僕はあなたを諦められないっ」

 どれだけ悔い改めようと、その選択だけはどうしてもできない。

 たとえそれが志歩の望むことであろうと受け入れられない。

 志歩と道を分かつことだけは決してできないのだ。

 悟はもう一度小さくつぶやいた。

「ごめんね、志歩さん……」

 枯れたと思った涙がもう一筋だけ流れ落ちた。
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