セカンドマリッジ ~病室で目覚めたら、夫と名乗るイケメン社長との激甘夫婦生活が始まりました~
 ドアを閉め、三人だけの空間ができあがると、恵美理が真っ先に悟へと詰め寄る。

「どうしてこの子との結婚を発表したのよ! 私との結婚を発表するはずだったでしょう!」
「っ……」

 恵美理の言葉に胸が痛む。悟の隣は恵美理のものだということにも、それを一時的にとはいえ自分が奪ってしまっていることにも苦しくなる。

 悟はそんな志歩を慰めるかのように優しく背に手を添えてくれるが、志歩の心はそれで安らぐことはなく、むしろ切なさを覚える。

「僕は恵美理との結婚発表だとは一言も言っていないよ。結婚発表をするとは言ったけどね」

 志歩を庇うようなことを言う悟に、もう気にかけなくていいと言おうとするも、ヒートアップしている恵美理の勢いに押されて、志歩は少しも口を挟めない。

「っ、何よそれ! 私を騙したというの?」
「こうでもしないと君が理解してくれないからだよ」
「私は十分理解しているわ。悟さんも私と結婚し直すほうがいいと思ってくれていたはずよ。そんな子とは早く別れて、私とやり直しましょう。発表はもう一度し直せばいいわ」
「志歩さんと別れるつもりはないと何度も言っているはずだ。恵美理とやり直すことは絶対にない」

 残酷なことを言わせてしまっていることに強い罪悪感を覚え、志歩は縋るように悟を見つめ、首を振る。本当に自分のことはもういいからと。

 しかし、悟は志歩に優しい笑みだけを向けて、今の言葉を撤回しようとはしない。

「どうしてよ! 悟さんにふさわしいのは私のはずだわ。八重沢も清塚もそれを望んでいたじゃない。悟さんもやり直したいと言ってくれていたでしょう?」
「それはもう何年も前の話だ。やり直したいと言った僕を拒んだのは君だろう? あの日に僕たちは完全に終わっている」
「え……?」

 悟の口から語られた初めて知るその事実に、志歩は困惑する。てっきり志歩と結婚する直前の話だと思っていたが、何年も前ならそもそも志歩と悟は出会ってすらいない。

 しかし、半年前に恵美理とその話をしているのを間違いなく聞いている。

 どういうことなのかと戸惑う志歩に、悟はまた優しい笑みを向けてくる。

 一方の恵美理は眉根を強く寄せながら、悟に訴えかけている。
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