セカンドマリッジ ~病室で目覚めたら、夫と名乗るイケメン社長との激甘夫婦生活が始まりました~
第二章 夫は異次元の人
意識が回復してから、しばらくの入院期間を過ごし、記憶を失っていること以外に問題となる症状のなかった志歩は、とうとう退院の日を迎えることとなった。
平日の昼中ではあるものの、悟が仕事を調整して迎えに来てくれている。
申し訳ない気持ちはあれど、今の自宅の場所すらわからない志歩にとってはとてもありがたい。悟にはしっかりと礼を言って素直に甘えておいた。
お世話になった人への挨拶を済ませ、悟と共に病院を出る。
二月中旬の今は、空気がとても冷たいけれど、ずっと入院生活を送っていた志歩にはそれすら心地いい。
軽く手を広げて深く息を吸い、外の空気をこれでもかと味わった。
「志歩さん。車で来たからこっちだよ」
駐車場へ向かう悟を追いかける。
前を歩く悟の両手には大きな荷物。志歩が入院時に使っていたものたちだ。
もちろん志歩が押しつけたわけではない。自分の荷物は自分で持つといくら主張しても、退院したばかりの志歩には持たせられないと悟が有無を言わさず志歩から取り上げたのだ。
志歩はほとんど手ぶらの状態で、様々な車が並ぶ駐車場をただただ悟について歩く。どれが悟の車なのかは皆目見当もつかない。なにしろ彼がどんな車に乗っているのかを志歩は知らない。いや、忘れているのだ。
悟が歩いていく方向を見ながら、あれだろうか、これだろうかと視線を巡らせる。
すると、悟が思いもよらないところで立ち止まった。
目の前にあるのは、光沢感のある黒色のボディーに、シャープなヘッドライトが印象的な車。車高は低く、よく見てみれば、ハンドルは左側についている。
車に詳しくない志歩でも、これが高級外車と呼ばれるものだとすぐにわかった。
「志歩さん、乗って」
悟は荷物を積んでから、右側にある助手席のドアを開いて志歩を促す。
この高級車に傷一つつけるわけにはいかない。志歩はカチコチになりながらゆっくりと乗車した。
悟が悠然と車を運転する中、志歩は微動だにせず、ずっと緊張感を維持している。うっかり汚してしまったらと思うと下手に動けないのだ。
「そんなに硬くならなくても大丈夫だよ。ちゃんと安全運転で行くから」
そういうことではないと声を大にして言いたい。
悟の運転技術に不安は抱いていない。この数分の間で彼の運転が上手いことはよくわかった。発進も停止もとてもスムーズで、極力車体を揺らさないようにしてくれている。不安に思うところなど何もない。
それよりも信用ならないのは自分自身だ。少しでも動けば、靴の汚れや手垢を残しそうで怖い。そんな思考でいっぱいだから、緊張を解けるはずもない。
結局、志歩は悟に対して、ただ苦笑いを返すことしかできなかった。
平日の昼中ではあるものの、悟が仕事を調整して迎えに来てくれている。
申し訳ない気持ちはあれど、今の自宅の場所すらわからない志歩にとってはとてもありがたい。悟にはしっかりと礼を言って素直に甘えておいた。
お世話になった人への挨拶を済ませ、悟と共に病院を出る。
二月中旬の今は、空気がとても冷たいけれど、ずっと入院生活を送っていた志歩にはそれすら心地いい。
軽く手を広げて深く息を吸い、外の空気をこれでもかと味わった。
「志歩さん。車で来たからこっちだよ」
駐車場へ向かう悟を追いかける。
前を歩く悟の両手には大きな荷物。志歩が入院時に使っていたものたちだ。
もちろん志歩が押しつけたわけではない。自分の荷物は自分で持つといくら主張しても、退院したばかりの志歩には持たせられないと悟が有無を言わさず志歩から取り上げたのだ。
志歩はほとんど手ぶらの状態で、様々な車が並ぶ駐車場をただただ悟について歩く。どれが悟の車なのかは皆目見当もつかない。なにしろ彼がどんな車に乗っているのかを志歩は知らない。いや、忘れているのだ。
悟が歩いていく方向を見ながら、あれだろうか、これだろうかと視線を巡らせる。
すると、悟が思いもよらないところで立ち止まった。
目の前にあるのは、光沢感のある黒色のボディーに、シャープなヘッドライトが印象的な車。車高は低く、よく見てみれば、ハンドルは左側についている。
車に詳しくない志歩でも、これが高級外車と呼ばれるものだとすぐにわかった。
「志歩さん、乗って」
悟は荷物を積んでから、右側にある助手席のドアを開いて志歩を促す。
この高級車に傷一つつけるわけにはいかない。志歩はカチコチになりながらゆっくりと乗車した。
悟が悠然と車を運転する中、志歩は微動だにせず、ずっと緊張感を維持している。うっかり汚してしまったらと思うと下手に動けないのだ。
「そんなに硬くならなくても大丈夫だよ。ちゃんと安全運転で行くから」
そういうことではないと声を大にして言いたい。
悟の運転技術に不安は抱いていない。この数分の間で彼の運転が上手いことはよくわかった。発進も停止もとてもスムーズで、極力車体を揺らさないようにしてくれている。不安に思うところなど何もない。
それよりも信用ならないのは自分自身だ。少しでも動けば、靴の汚れや手垢を残しそうで怖い。そんな思考でいっぱいだから、緊張を解けるはずもない。
結局、志歩は悟に対して、ただ苦笑いを返すことしかできなかった。