セカンドマリッジ ~病室で目覚めたら、夫と名乗るイケメン社長との激甘夫婦生活が始まりました~
 旅行のことを想像して嬉しい気持ちを滲ませる志歩に対し、加奈は意味ありげに含み笑いをしている。

「二人で旅行行くんだ。ふーん、そっか、そっかー。それは泊り?」
「うん、一拍だけだけどね」
「ほー、それは楽しみだね。ついに、志歩も、大人の階段を!」

 わざとらしく強調しながら言う加奈に、志歩はジトっとした目を向ける。

「ちょっとつまらない冗談はやめて」
「いや、心境的な話よ。だって、志歩にとっては、旦那さんとの初めての旅行なわけでしょ? そんなの期待しない方が無理だから。別にそれをするしないに関わらずさ、二人の関係が変わるかもとは思うでしょ?」

 その期待はしていると言わざるを得ない。悟ともっと親密になれるのではないかと少なからず思っている。

「まあ、それはね。もっと近づけるかなとは思ってるけど」
「ほら、やっぱり。ま、思う存分楽しんでおいでよ。そして、私にときめきを供給して! 職場と家の往復でキュンが足りないのよ!」

 手を広げながら大袈裟に言う加奈を呆れた顔で見つめる。

「いや、キュンて……」
「トゥンク?」
「表現変えても一緒だから」

 あまりにくだらないやり取りに笑いがこぼれる。学生でもないのに、何をこんなことで笑っているんだと、二人はさらに笑いを大きくする。

 馬鹿みたいに楽しい空気が流れるが、その空気は一瞬にして崩れ去ってしまう。

 唐突に、志歩の手首をつかんだ何者かが、最悪の空気をもたらした。
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