悪辣外科医、契約妻に狂おしいほどの愛を尽くす【極上の悪い男シリーズ】
彼が私の頭の上にトンと手のひらをのせる。きっとなんの気ない仕草なんだろうけれど、私は撫でられているようでドキドキしてくる。
「あ、でも、今日はヒールが高いから、そこまで差はないと思いますけど」
「普段はそこまで高いヒール、履かないんでしょう? 気を遣わせちゃったかなと思って。もしかして話しにくかった?」
「いえ、そういうわけでは。今日の服に合っていたから履いただけで。……でも、ちょっと失敗だったかなあと思ってるんです。見ての通り、寒くって」
やっぱり外に出ると足元がスカスカして冷たい、そう説明しようとしたところで、突然彼が私の肩を抱き込んだ。
えええ!?と驚いて、身を小さく縮めて彼を見上げる。
「少しは暖かくなった? マフラーでも持ってくればよかったな」
当の彼に他意はないようで、呑気な後悔を口にしている。
「あの……冷えるのは、足元の話です」
「足を温めるのは難しいから、せめて肩くらいはと思って」
にっこり笑って持論を展開する真宙さん。腕を解く気はないらしく、私の肩はがっしりとホールドされたまま。
女性の肩を抱いて平然としているなんて……やっぱり彼は女性を翻弄する罪な男なのかもしれない。
映画館はすぐ目の前。その数十秒の距離がやけに長く感じられた。
エントランスに入ると、肩は解放してもらえたものの、今度は手を繋がれた。