悪辣外科医、契約妻に狂おしいほどの愛を尽くす【極上の悪い男シリーズ】
「結構混んでいるから気を付けて」

 またしても他意はないようだけど、男性とお付き合いしたことのない私は触れるだけでも緊張する。

 ちなみにデートとは名ばかりで、まだ正式なお付き合いはしていない。キスもまだ、ハグもまだである。

 父からは結婚を勧められていて、真宙さんもぜひと言ってくれているけれど、恋愛経験ゼロの私にとってはあまりにも急な話だった。心の準備期間をもらって現在、お試しデートをしているところである。

「はい、どうぞ」

 エントランスの奥の端末で、真宙さんが電子予約したチケットを紙に引き換えてくれた。手渡されたチケットを見て、私は目を丸くする。

「これって――」

 人気の若手俳優が主演を飾る流行りのラブストーリーだ。真宙さん、恋愛映画は観ないって言っていたのに。

「璃子さん、観たがってたから。……勝手に変えて迷惑だった?」

「いえ、嬉しいです。でも、よかったんですか? 全米が震え上がるサバイバルアクションホラー、観たかったんじゃ……」

「ああ、気にはなるけど、ホラーを観るなら僕ひとりでいいかな。璃子さんを怯えさせるわけにはいかないし」

 そう苦笑して、私の手を握り直す。今度はしっかりと指を絡めて。

「それにほら、恋愛映画を観れば、そういう気分になるかもしれないでしょ?」

「そういうって……」

「恋愛したい気分」

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