悪辣外科医、契約妻に狂おしいほどの愛を尽くす【極上の悪い男シリーズ】
 満面の笑みでマグを置く。どうやら気に入ったみたい。食の好みが合うって大事よね、と胸中でこっそり安堵する。

 もしかしたら、もしかしたらだけど、今後お付き合いするかもしれないし……とそんな考えが頭をよぎり、思わず照れくさくなって目を伏せた。



 コーヒーを飲み終えた私たちは、カフェから徒歩三分のところにある映画館へ向かった。

 歩きながらふと彼が「今日はいつもと印象が違うね」と切り出す。

「ちょっとイメージチェンジを。……似合っているといいんですけど」

「とても綺麗だよ。今までも充分、かわいかったけどね。今日はとくに素敵だ」

 照れもせず褒め言葉を口にするあたり、大人の余裕を感じる。あと、ちゃんと服装やメイクの違いに気付いてくれるところにも。

 褒めポイントを探すのが上手で社交的。私だけでなく誰に対してもそうに違いない。

 モテるんだろうなあ。性格はもちろん、見た目だって完璧だもの。

 ――と、ふと先ほどの小説に出てくる色男医師を思い出し、血の気が引いた。

 もしかして真宙さんも女性を手のひらで転がす色男? それはちょっといろんな意味で前途多難なのでは……。

 悶々としていると、不意に屈み込んだ彼が、私の目の前ですごく綺麗な笑みを作ったのでドキンとした。

「璃子さんって、身長いくつ?」

「ええと……一六〇センチです」

「二十センチ以上、差があるのか」
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