悪辣外科医、契約妻に狂おしいほどの愛を尽くす【極上の悪い男シリーズ】
 今度こそ強く彼の体を突き飛ばし、倉庫の入口に向かって走り出す。

 しかし、すんでのところで腕を掴まれ引き留められた。

「言っただろ? 僕の気持ちは友達以上――君を女性として見てるって。本当はもっとひとつになりたいって思っているけど?」

 うしろから全身を包み込むように抱き竦められ、その温もりにめまいがした。

 これもきっと嘘。彼は多分、誰も愛していない。

「君が許してくれるなら、僕はどこまでも愛してあげられる」

 彼の指先が、もの欲しげに私の腰を辿る。

 騙されないで、絆されるな、心を許しちゃダメ。そう自身に言い聞かせるも、勝手に鼓動が高鳴り、体が熱く疼いてくる。

「……放してください」

 声を絞り出すと、ようやく彼は私から手を放してくれた。

 私は資材庫を出て、人気のない廊下を駆け抜ける。近くのガラス扉から雨の降る外へと飛び出した。



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