悪辣外科医、契約妻に狂おしいほどの愛を尽くす【極上の悪い男シリーズ】
 触れた唇と唇の隙間から漏れる甘い水音。食むように舐め取られ、離れたかと思えばまた吸いついてきて、息つく暇もなく隙間から舌を捻じ込まれる。

「っ、まひ……ろさ……」

 慌てて身じろぎすると、今度は手首を掴まれ、壁に強く押しつけられた。

 横暴な、征服するようなキス。忍び込んできた舌が、私のそれを追いかけてきてくすぐる。

 どうしたらいいのかわからなくて、そもそも身動きも取れなくて、壁と一体化したかのように固まった。さんざん深くを探られた後、彼の舌が引っ込んでいく。

「……んあっ……」

 喉の奥から漏れ出る吐息。ようやく解放されたかと思えば、再びキスをせがまれ、首筋を掴まれる。

 耳のうしろに指先があたり、ぞくっとした。ほんの一瞬湧き上がる快楽。そんな自分に罪悪感を覚え、咄嗟に彼の胸に手をついた。

「やめて――」

 憧れていた人からのキス。以前なら純粋に胸をドキドキさせて喜んでいただろう。

 なのに、ちっともそんな気分になれないのは、気持ちがこもっていないと気付いてしまったからだ。

「急にっ、こんなことするなんて――」

 身じろぐと、彼はさも不思議そうな顔で「急に?」と覗き込んできた。

「ずっと、したかったんだよ。君が気付かなかっただけだ」

 雄々しいながらも艶っぽく、色めいた眼差し。嘘だ、こんな目をする彼を私は知らない。

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