縁はいなもの?味なもの?
🐝🐝


口は悪いが目付きは優しくなった大将。
加奈は彼等といつからの知り合いなのだろう
そんな疑問が武の脳裏をはしる。

「女将さん餅焼くからストーブと、でかいフライパン貸して」
加奈は姉さん被りのピンクの割烹着を来た女将さんに声を掛けた。

「あいよ」

昔ながらの丸く店内の真ん中に備え付けられたストーブの上にフライパンを乗せる
餅を10個並べて蓋をしてじっくり焼く
5分位すると餅のソコがこんがりとやけてきた
加奈が蓋を開け餅を裏替えそうとした時

「おい、兄ちゃん餅うらがえせ加奈にばかりやらせるナ」
と声がした。
「えっ、オレ?が」
あまりの威勢の良さに
「あ、はい」
と口から自然と出て立ち上がる
剣道と言う部活の縦社会に育って来た武と漁師軍団は上下関係がすぐできあがっていた。
「アチアチアチチチあちぃー」
餅の柔らかいところが指にくつっいたのか武が叫ぶアチーィ💦
こんがりと香ばしい香りが漂ってくる。

「馬鹿だねえ
ほらトング」

女将さんは武にトングを手渡した
右手をフリフリぺろぺろ、人差し指に餅が へばりついてとれない
左手でトングを受け取り、一度開けて閉めたフライパンの蓋を又開けて餅を裏返した。

しばらくするとお餅はプクーッと餡子が薄く透けるように膨らんだ
店内に香ばしい香りが漂ってくる。

どこか昭和を思わせる店内は広くガラガラガラとガラス戸を開ける音がひっきりなしだ、
「はい、いらっしゃい、いらっしゃい」
女将さんの声は高く響いた。

「やけました」
武の声掛けに漁師は小皿を抱え並ぶ、こうゆうとこは日本人の偉いところ

「パクっ、よく焼けてる焼き方も上手いぞ」

「そうですか、部活で正月は
毎年稽古始めの時、焼きましたからね
餅焼くのは初心者ではないです」

「稽古はじめなら柔道か?」
「剣道です」
武は、凛々しく背筋を伸ばす。


「剣道か、なる程、俺は柔道だ
武道は礼儀から入るもんな
お前なかなかいいぞ」

「うわあ、のびるぜ」
1人の漁師は調子に乗って
「おい、どんだけ伸びるかヒッパレ」
どこにも1人はいるお調子者がすぐ乗ってくる
「分かった」
加えたお餅を引っ張ると順調に伸びるが”アレッ”カパッ白い餅にピンクの物体が収まった

な、なんとその漁師の口から入れ歯が餅について飛び出て来たウワッ

「エッな、なに?」
シ━━━━━━ン
餅に噛みついたままの入れ歯に全員
ちゅうもーく!
「入歯が餅食ってるぞ」
お調子者に握られプラーン、プラーン揺れる入れ歯が
落ちる前に
「オットトトあぶねーえ」
入れ歯持ち主の漁師が入れ歯を引っ掴む


一瞬静寂が訪れる、の後
ꉂꉂ ⱴ(‎-͈᷄ ε -͈᷅ ⱴ)ぷぷぷ〜
ガハハハハ笑いの渦が・・ 

しかし何も無かったように小さなバックからポリデン○を取り出しニュルリと塗るとカプリと口に、入れ歯は戻った。
「親方インプラントに変えたがいいんじゃー」

そんな声も聞こえたが
小さい事には拘らない、男気溢れる海の男はあんまし小さいことは気にしない、入歯と持ち前の歯の違いだけ
噛み砕いて胃に落とす作業は同じ

30あった餅は漁師さん?達の腹の中へと消えた
残りの餅も同じ要領で焼く

加奈も武も餅の御礼にと新鮮な刺身定食に焼き魚を漁師さんからご馳走されてお腹はパンパン
「又来いや武
加奈」

上下関係はあるが人情に熱いのがここの漁師

質のいいスーツもジャンバーに長靴も、ここじゃ関係ない、汚れるのが嫌なら来るな精神

「ご馳走様でした」
武も加奈も元気もらって店を出た
潮の香りが体全体を包み、生き返る思いがした。
ここにいればなるほど小さい事は気にならないなと武は思った
「昼からの商談も頑張れそうだ」
とボソッと呟く。

加奈のオンボロアパート前で加奈を下ろす「じゃあね〜👋」

バイバイと2回手を振ってサッサと階段を上がって行く

「アレ?普通の女なら
ネェネェ今度いつあえるの?とか聞くよな!」
加奈は聞いてこない、今までの女の子なら次の約束をつけたがるのに・・ 
そんな事を考えながら加奈を見送る
彼女は一度も振り返ることなく部屋へと消えていった。

「な、事ある?」




それから何日か過ぎても俺達は付かず離れずの何となくな関係がつづいていた。
好きでもないし嫌いでも無い、友達でも無いしタダの知り合いだから、でも婚約者、束縛ももちろんない、自由な関係って都合がいい他なんでもないが、婚約者は婚約者のままだ

まず加奈に聞いてみたい

「俺らってナニ❓」

逆に聞かれたら俺は答えられない
確かに一緒にいたらメチャ楽しい
ケド約束してまで会いたいとか分からない


「アハハハハそれは
始まりだな!」

「はじまり?何の❓」
大学時代の悪友荻原仁は大笑い

「お前、いいかげん中坊か?」

「は?」
「まるで恋愛初心者だな、あの人私に気があるのかなぁ、どうなんだろーwーwテキナ」
「はぁ?」
武は不思議そうにバカにして来る仁を見つめた、なるほど仁が言うことも外れてはいない

「って事は、加奈を好きになりはじめてるのか?」

一瞬、息を止めた武を見て、仁は目を見開いて驚いた
ただ、からかっただけなのだと武の真剣な目を見たら仁は言えなかった。

「まさかの当たり?」

武と仁は見つめ合い

「マジかよ」

とゴクリと生唾を飲んだ。

白い雪が桜の花弁に変わる季節が来ても武と加奈の距離は縮まらない相変わらず いや前よりも遠くなったのかもしれない、加奈を意識し始めた武は想いとは裏腹に

「加奈を好きな訳が無い」

と思おうとしていた、加奈を好き?オレが?なんで?そこでなんで加奈を好きになるんだよ

自問自答する毎日か ら抜け出せなくなってしまった。

加奈はフロントに立つていた、高そうな高級車が加奈の目の端を通り過ぎた
お客様が来た合図のようなものだ姿勢を正して客を待つ

上着のボタンをしめながらなんと社長が入ってきた

「お疲れ様です社長」
加奈は、ペコリと頭を下げた。

「ああ、おつかれさま」と爽やかな笑顔

「で。武とは上手くやってる?」

社長は万遍な笑顔を見せて加奈を見た

「あ、え?まあはい」
ドギマギと返事をする加奈は
社長の機嫌をそこねたら施設への援助があやうくなると思い直し
「上手く言ってます武ってば私の事大好きみたいですからぁアハハハハ
こ、困ってしまうー」


「そうかそうか
仲が良さそうで安心したぞ」
ご機嫌で頷く社長を眺めながら加奈はカラ笑いを振りまくアハハハハ՞ ՞ハァア

武に見染められたわけじゃなくて、武のお姉ちゃんに見染められたわけだし便乗して社長に利用されてる訳だし
なんなん?


武は私の事どんな風に思っているんだろう❓
ま、そんなんどーでもいいかぁ!
面倒くさ





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