透明なエンゲージリング
「ハァ……」

リオンの口からまたため息が出る。同じ高校のクラスメートたちは、「授業だりぃ。家に帰ってゲームしたい」と友達同士で話しているものの、リオンは真逆だった。家に帰りたくない。その気持ちだけがリオンの心の中に渦巻く。

「どこ行こうかな……」

この街に来てから、いつもリオンは学校が終わると暗くなるまで外にいる。ファストフード店を利用することが多いのだが、今月はお小遣いがもうなくなりそうだ。

(あの二人にお小遣いを頼むのは嫌だ!)

無料で利用できる施設をリオンは探す。しばらくして図書館を発見した。大きな煉瓦作りの建物にリオンは足を止める。

リオンは本を読まない。幼い頃、母親から絵本の読み聞かせをしてもらった時にしか読んだ記憶がない。しかし図書館は無料で使用できる。

「仕方ない。ここで過ごすか」

リオンは図書館の中へと入る。一歩中へ足を踏み入れてすぐに大きな本棚と大量の本に出迎えられた。最近入荷されたばかりの小説のようだ。

(……とりあえず絵本コーナーに行くか)
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