透明なエンゲージリング
絵本ならば幼い頃に読んだものがあるだろう。そう思いながら絵本コーナーへと足を進める。図書館の中には、平日のためかほとんど人がいない。

刹那、図書館の窓際の椅子に座る人を見かけてリオンの足が止まる。リオンとそれほど歳が変わらないであろう女性がいた。

女性は大きめの白いフード付きの服とチェック柄のスカートを履き、その頭には帽子をすっぽりと被っている。分厚い小説を熱心に読んでいるその姿に、何故かリオンは目が離せなくなった。

(綺麗な子だな……)

初対面で名前を知らない女性に、リオンは何故かそう思ってしまった。

それから数日。リオンは学校が終わると図書館へ行くようになった。図書館に行くと、いつも窓際の席にあの女性がいる。いつも大きめの服を着て、青い瞳を煌めかせながら小説を読んでいる。

(いつも図書館にいる。学校は行ってるのかな?)

見かけるたびにリオンの中で女性の存在が大きくなる。そして土曜日。朝から図書館に行ったリオンは、勇気を出して声をかけてみることにした。
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