いきなりの婚約破棄からはじまる幸せ確定IFルート
 家庭教師などの職業婦人として生きていくか、教会に行って神に使えるシスターになるかの二択……いえ。運が良かったならば、妻を亡くされた貴族から後妻になる話は来るかもしれない。

 ……とても年齢差のある縁談になるとは思うけれど。

「……モートン伯爵令嬢」

 とぼとぼと城の廊下を歩いていた時に不意に名前を呼ばれて振り返れば、そこにはご両親を亡くされ若くしてブライアント公爵となられたニコラス様の姿があった。

「まあ。ニコラス様ではありませんか」

 立ち止まった私に駆けつけてくれたニコラス様は、金色の髪に薄い緑の瞳、それに、まるで芸術品のように整った容貌。

 この国の貴族でも容姿端麗の貴公子として知られて、本来ならば男性側からのダンス誘いを待つのが通常の手順であるはずなのに、女性側からの熱い誘いがいくらでも来ていると、そんな噂でもっぱらな男性だった。

 つまり、私などのように平凡な貴族令嬢からすると、どんなに手を伸ばしても届かない、きらめく星のようなお方だ。

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