いきなりの婚約破棄からはじまる幸せ確定IFルート
 確かロベルトとは同じ歳、共に通った貴族学校で仲が良かったということで、私も何度かご挨拶をさせていただいた。少々、お話もしたかもしれない。

 ……何を話したかは覚えていない。

 友人ロベルトがしでかした突然の婚約破棄劇を見て、紳士的なニコラス様は、私を心配して追いかけて来てくれたのだろう。

「ルシール嬢。ロベルトは何故、あのような事を……信じられません」

 眉を寄せて悩まれているお顔も流石に魅力的で、現在貴族社会で一番人気の未婚者だけあるわ。

 冷静に考えて頷いた私だけど、それはここでの対応としては間違っていると気が付き、出来るだけ悲しそうに見える表情を浮かべた。

「それは……私にも、わからなくて」

 ここでは私は、そう言うしかなかった。

 だって、私は本当にロベルトとは、上手くいっていると思っていたのよ。

 激しく求め合うような恋愛関係ではないけれど、お互いに信頼もして穏やかな友人関係の夫婦になっていくだろう。

 そう思っていたのに。

 ロベルトからの裏切りとも言えるあの行動については、まだ信じられない。

 もっと、私にも早く話してくれればとは思う。

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