身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?



 シスター・エルダは、どっしりとした貫禄を漂わせる中年の女性だった。エリオンがエリシアを預けたいと話すとほがらかに迎え入れてくれ、危うく人さらいに遭うところだったと知ると、真面目な顔をして心配してくれた。

 エリオンはすぐにノアム大聖堂へ戻らなければならないと帰っていった。残されたエリシアは、エルダの計らいで、何日かぶりのまともな食事にありつき、お風呂にも入らせてもらい、寝床に案内されるとあっという間に眠りについた。

 翌朝、エリシアは足音の気配で目を覚ました。窓から差し込む光は仄暗く、まだ夜が明けたばかりだろう。

「ルルカ、聞いた? あの子、行き場がないからしばらくここで暮らすんですって」

 窓の外からはっきりした声が聞こえた。

「あの子って、エリシアさんのこと? マルナはなんで知ってるの?」

(私の話……?)

 エリシアは体を起こすと、声のする窓へと向かう。小さな窓から外を覗くと、背格好の似た修道女姿の若い女性がふたり、ほうきを片手に何やらこそこそ話をしている。

「エルダ様に言われたの。エリシアさんが起きたら、廊下の拭き掃除から教えてって。ルルカは聞いてないの?」
「私は全然。マルナはしっかり者だから、お世話係に認められたんだわ。ねぇ、マルナ。エリシアさんってどんな方かしら」
「どんなって……、昨日ちらっと見ただけだから。私たちと同じ年ぐらいの美人……」

 マルナはこほんと咳払いし、すました様子で続ける。

「私たちよりは劣るけど、ちょっと美人ね」
「マルナがそんな風に言うなんて、すっごく美人じゃないの。ねぇ、優しそうだった?」
「そんなことまでわかるわけないじゃない。さあ、ルルカ、いつまでもおしゃべりしてないで、掃除しましょ」
「はーい」

 マルカが庭を掃き出すと、ルルカは素直に従って、ふたりで手際よく枯葉を集めていく。そして、はき掃除が終わると、ふたりは建物の中へと入っていった。
< 15 / 130 >

この作品をシェア

pagetop