身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
(廊下の拭き掃除があるんだっけ……)

 エリシアはすぐにベッドへ駆け戻ると、布団を丁寧にたたんで、長い黒髪を三つ編みに結んだ。そうしていると、扉がノックされ、マルナの声がする。

「エリシアさん、起きてる?」
「はいっ。今、起きたところです」
「着替えを運んできたので、ドアを開けてくれますか?」

 マルナはハキハキと話す。朝の忙しい時間を少しも無駄にしたくないというような口調だ。もたもたしていたら気を悪くするかもしれない。エリシアがあわててドアを開けると、早速、無表情のマルナが生成りの服を差し出してきた。

「修道女のマルナです。エルダ様に頼まれて、今日からあなたに仕事を教えることになりました。よろしく」
「エリシアです。よろしくお願いします」

 服を受け取ると、マルナの後ろから、ひょこっと女の子が顔を出す。エリシアは目を丸くした。すると、女の子は口元に手をあててくすくす笑う。

「私、ルルカって言います。驚いた?」

 人懐こそうに笑う彼女に、エリシアは口をぽかんと開けたままうなずく。驚くことに、マルナとルルカは同じ顔をしていたのだ。

「マルナは双子の姉なの。よく、見分けがつかないって言われるけど、右目の下にほくろがあるのが、マルナ。左目の下にあるのが、私。覚えるの、簡単でしょ?」

 ルルカは左目の下にあるほくろを指差す。マルナは気難しそうだが、ルルカは無邪気な雰囲気をまとっている。ふたりはまったく違うように見えるが、やっぱり顔立ちは瓜二つで、慣れないうちはほくろで見分けるようにと、初対面の人に伝えなれているような仕草だった。

「すっかり覚えました。どうぞよろしく、ルルカさん」

 にっこりすると、ルルカはうれしそうに笑う。

「エリシアさん、優しそうでよかったー。ねぇ、掃除が終わったら、お祈りまでに少し時間があるから、お話しましょー」
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