身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
礼拝堂に集められた修道女たちの後ろに、エリシアは控えていた。サイモンの厳しい表情を見れば、ノアム大聖堂で何かがあったことを想像するのは容易だった。緊迫した空気が張り詰める中、エルダが口を開く。
「みなさんも、ノアム大聖堂で療養が行われていることはご存知のことかと思います。いまだに病を患う方は後を絶たず、看病を行う修道女たちの手を増やさないといけない状況は続いています。そこで、サイモン様からご提案がありました」
エルダは修道女たちと一人ずつしっかりと目を合わせていった。そして、最後にエリシアを見た後、すぐに年長の修道女へと視線を戻す。
「シムアの教会から修道女を派遣してもらいたいとのこと。私はこのお話をお受けしなければならないと考えています」
それを聞いた途端、周囲がざわついた。修道女たちはそれぞれに顔を見合わせ、恐怖におびえるように肩を震わせる。しかし、誰一人として反対の声をあげるものはいなかった。
「エルダ様、誰が行くのですか……?」
みんなが落ち着きを取り戻した頃、年長の修道女がそう尋ねた。
「私は二名の方に行ってもらおうと考えています」
エルダはそう言うと、スッと視線をエリシアの前へ移した。
「マルナにルルカ。あなたたちに行ってもらいます。良いですね?」
「私たち……ですか?」
ルルカは息を飲むようにつぶやくとマルナを見る。マルナもまた、いつもの気強さを消し、顔を強張らせていた。
毎日祈りを捧げ、はやく病が落ち着きますようにと願っていても、いまだに患者を増やし続けている未知の病に立ち向かうのは、誰だって怖いだろう。ここにいる全員が、ふたりの消極的な態度をとがめたりはしなかった。