身代わり聖女になったら、なぜか王太子に溺愛されてます!?
「た、たばかってはおりません」
「嘘をつくな。民がおまえを聖女と崇めているのは、還炎熱の恐怖からだ。おまえが聖女だからではないっ」

 エリシアはグッと唇をかみしめた。カイゼルが言うことは正しい。しかし、あのときはそうするしかなかった。

「司祭様は我が目で見たことを信じておられます。私に何の力もないことは、私自身だけが知っていることで、司祭様が王家をだまそうとしたことはありません」
「では、認めるのだな、おまえは」
「私はただ……ルイ殿下のお役に立てるのであればと思っただけなんです」
「ルイがもう二度、還炎熱にかからないと約束できるとでも?」
「それは……」

 言葉につまると、カイゼルは唇の端をうっすら引きあげる。

「できるはずがないな、おまえは聖女ではないのだから。しかし、俺も無慈悲ではない。三ヶ月の猶予をやろう」
「三ヶ月ですか……?」
「還炎熱の再燃は三ヶ月以内に起きる。三ヶ月後もルイに再燃がなければ、おまえをフェルナ村へ帰してやろう」
「え……、フェルナ村に……ですか?」

 胸がチクリと痛み、次第に拍動が強くなる。

「なぜ、なぜですか? 私はシムアに……」
「神の使いであると嘘をついたおまえに、修道女になる資格を与えることはできない」
「そんな……」
「婚約者は必死におまえを探しているそうだ。せめてもの慈悲で、おまえを元の生活に戻してやろうというのだ」

(ガレスが探してるですって?)

 にやにやと笑うガレスの顔が浮かんで、エリシアの全身は震えあがる。やっとの思いで逃げてきたのに。今さら、フェルナ村へ戻るわけにはいかない。
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