それは麻薬のような愛だった

「……ん?」


胸元には小さな鬱血痕があった。それも幾つも。


「…なんで」


思わず声に出してしまう程に驚いた。曇る鏡を何度手で拭っても、見えるのは同じ光景だった。

キスマークだなんて、今までつけられた事は一度だって無かった。


先程の行動といい、ますます訳がわからなくなった。昨日のセックスに至っては何も記憶が無いのだ。

雫は鏡に手をつき、項垂れて考える。

もしかしたら酔いに任せて自分からせがんだのかもしれない。きっとそうだ、そうとしか考えられない。

でなければあの伊澄が、こんな独占欲を残すような真似など絶対にしない。するはずがない。


「…っ、」


モヤモヤとしたものが胸の内に広がり、雫は鏡から目を逸らした。

そのまま一度も自分の姿を目にする事なく全身を洗い終え風呂場を後にし、洗面所に置いてあったタオルで水を拭き取るとすぐに服を着込んだ。

ドライヤーを使い一通りの身支度を整えてリビングに戻ると、ラフな服に着替えた伊澄がソファに腰掛けていた。

< 102 / 215 >

この作品をシェア

pagetop